
年末年始が近づくと、必ず天気予報を開いてしまう。
「晴れるなら行きたい」「雪マークがあるし、やめた方がいいか」その画面を見ながら、何度も行く/やめるを行き来してきた。
サラリーマンだった頃の僕は、ストレスが限界に近づくと、休みの日に家でじっとしているのが本当にしんどかった。
工業高校卒で、胸を張れるような経歴もなく、「普通の生活をしている自分」に自信が持てなかったからだ。何かを掴まなきゃと思って、年末年始もキャンプやツーリングに出かけずにはいられなかった。
年越し宗谷ツーリングや、真冬のロングツーリングも、「すごいことをしたかった」というより、どこかで「このままじゃダメだ」と焦っていた部分が大きかった気がする。
この記事は、そんなふうに「出かけないとおかしくなりそう」だった過去の自分に向けて書いている。
なぜ年末年始の天気予報は当たらないように感じるのか

年末年始の天気予報は、「また変わってるじゃん」と感じることが多い。
実際、冬の日本は寒気の流れや風向きがちょっとズレるだけで、晴れ予報が雪になったり、曇りが吹雪になったりしやすい季節だ。
特に、
・日本海側(北陸・山陰など)
・内陸の山間部(長野・岐阜・群馬など)
このあたりは、予報だけでは読み切れない「数時間単位の急変」が起きやすい。
もうひとつややこしいのは、天気予報そのものより、僕らの読み方だと思っている。
「曇り一時雪」と出ていても、「まあ大丈夫だろう」と都合よく解釈してしまうことがある。予報は「安全の保証」ではなく、「そうなる可能性が一番高い」という情報にすぎない。
だから今は、「予報が当たるか」ではなく、「外れたとき、自分の装備とスケジュールで耐えられるか」で考えるようにしている。
地域別「危ないのは天気より〇〇」

ここからは、ざっくり地域ごとに「天気アイコンより見ておきたいもの」を書いてみる。
完全なガイドではないので、「そういう傾向があるんだな」くらいで読んでもらえたら嬉しい。
北陸・長野・北海道(日本海側〜寒冷地)
このあたりで怖いのは、「雪そのもの」よりも、視界と風だと思っている。
北陸や長野北部、北海道の冬道では、
・雪雲の流れ方次第で、数十分で世界が変わる
・路肩の雪と舞い上がる雪で、白い壁みたいになる
・地吹雪で、自分の進行方向すら分からなくなる
ということがある。
年越し宗谷を走っていたとき、ホワイトアウトの中で本当に怖かったのは、「滑ること」よりも「何も見えないこと」だった。
自分のバイクのスピードメーターが見えない。
手を伸ばした先が、真っ白で何もない。
そんな中、大型トラックがものすごいスピードで、本当にスレスレを追い越していった。
あの瞬間は、心の底から「これは一歩間違えたら死ぬ」と思った。
後ろから追突されないようにブレーキランプを異常に明るいものにしていたけれど、今思えば、あの視界の中でノロノロ走っていた自分は、トラックの運転手にとっても相当危険な存在だったはずだ。
中国・関西あたり(雪が「たまに」降る地域)

この辺りでやっかいなのは、「積もっていない凍結」だと思う。
・橋の上
・トンネル出口付近
・山影のカーブ
見た目は「ちょっと濡れているだけ」に見えても、実はうっすら凍っている、ということがある。雪に慣れていない地域ほど、対策も遅れがちなので、油断すると「あ、もう止まれない」という状況になりやすい。
太平洋側の都市部(大阪・京都・東京・福岡など)

太平洋側の平地は、「冬でも走りやすそう」に見える。
でも実際には、時間帯による路面温度の変化がちょっと怖い。
・夜明け前の早朝
・日が落ちた直後
この時間帯は、気温が一気に下がる。昼間に溶けた水分が、そのまま薄い氷になることもある。
「年末年始天気予報2025」で見ると、晴れマークが並んでいる大阪や京都でも、最低気温が0〜3度くらいの日は普通にあるはずだ。
晴れていても「寒さと路面」が敵になるので、「何時にどこを走るか」の方を大事にしている。
沖縄・南国

沖縄は「暖かい年越し」のイメージがあるけれど、実際には雨と風にやられることも多い。
・気温は10度台でも、風で体感温度がだいぶ下がる
・雨が続くと、観光どころか移動すらしんどい日もある
「寒さで死にそう」というよりも、「思っていたのと違う消耗の仕方をする」地域、というイメージに近い。
晴れでも、やめた方がいいと感じた条件

天気予報が「晴れ」でも、行かない方がよかったなと思った条件を、過去の自分に向けて箇条書きしてみる。
・何かから逃げたくて出かけようとしている
・「行かないと負け」のような気持ちになっている
・普通に生活している自分を、心のどこかで見下している
・経験値を積まないと、自分には価値がないと思っている
正直に言うと、昔の僕は全部当てはまっていた。
工業高校卒で、いわゆる「輝かしい経歴」が何もなかった僕は、何かを掴もうとして、常に動いていないと不安だったんだと思う。
年末年始も、「何か特別なことをしている自分」でないと、存在を許せなかった。
行かない選択をできるようになった年末年始

今は、年末年始にあえて出かけない年もある。
昔の僕からしたら、信じられない選択かもしれない。
それでも今は、
・家でゆっくり過ごす年末年始
・近所を少し散歩するだけの年末年始
そういう時間を、「何もしていない」とは思わなくなった。
変わったのは、何かを成し遂げたからというより、「あのホワイトアウトから、生きて帰ってきた」という事実の方が大きい気がしている。
あのときもし事故って死んでいたら「何かになろうとして無理をして死んだ、ただの無謀な人間」だったかもしれない。
生きて帰ってこられたからこそ、今はあの経験を宝箱のひとつとして、そっと眺めることができる。
出発前チェックリスト(YESが3つ以上なら、一度立ち止まる)

ここに、過去の自分に渡したかった簡単なチェックリストだけ、置いておきたい。
出発前チェックリスト
- 当日または前日の最低気温が3度以下
- 風速8メートル以上の予報が出ている区間がある
- 前日に雪やみぞれが降った場所を通る予定
- 峠や標高の高い道を走るルートになっている
- 日没後に山間部を走るスケジュールになっている
- 体調が万全とは言いづらい(寝不足・疲れ・心がすり減っているなど)
- 「今日しか行けない」と思い込み、予備日を用意していない
これは、「3つ以上なら絶対に行くな」という話ではない。
ただ、気合いだけで押し切ろうとしているときに、一度立ち止まって「本当に今なのか?」と自分に問い直すためのメモだと思ってほしい。
それでも出かける人への最低限の準備

ここまで読んでも、「それでも行きたい」という人もいると思う。
その気持ちは、すごくよく分かる。
だからこそ、「止める」ためではなく、「生きて帰るため」という前提で、最低限あると楽になる装備をいくつか書いておく。
防寒装備は「やりすぎ」くらいでちょうどいい
冬のツーリングは、「寒さで判断力が削られていく」のがいちばん怖い。
たとえば...
電熱インナー・電熱グローブ(コミネ、RSタイチなど市販品)
→ 指先の感覚が残っているかどうかで、安心感がかなり変わる。
厚手のネックウォーマー(防風・防寒両対応のもの)
→ 首元を守るだけで体感温度が一段変わる。
撤退ルートと「逃げ場所」を先に決めておく

ルートを決めるとき、今は必ず、
・山を避けて平地に降りられる道
・早めに高速に乗り直せるインター
・「ここで泊まればいいや」と思える街
を事前に地図上でチェックしておくようにしている。
「ここまで行ってダメなら、この街で一泊」
という逃げ場所がひとつあるだけで、走っている最中の心の余裕がまったく違う。
おわりに 無理をしなくても、価値は減らない

年末年始の天気予報を見ながら、「行くか、やめるか」で揺れている人へ。
昔の僕は、 「行かないとダメだ。何かしていないと意味がない。経験値を積まないと自分の価値がない...」と本気で思っていた。
でも、あの白い世界から、生きて帰ってきた自分に対して、今は素直に「よくやったな」と言える。
そして今は、家で静かに年を越す自分のことも、「それでいい」と思えるようになってきた。
走る年があってもいい。
止まる年があってもいい。
どっちを選んでも、ちゃんと「自分で選んだ」なら、それで十分だと思う。
無理をしなくても、あなたの価値は減らないのだから。
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