ベル雑記

バイク系メディアでWEBライターをしているカブ主キャンパー🔔ベルの日常

年越し宗谷岬ツーリングを振り返って

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年越し宗谷ツーリングについて



年越し宗谷ツーリングを終えて友人達に細かな事を聞かれる事が多い
そしてまた行くかもしれないので、自分の為にも細かな事を書いて残しておこうと思った。







○バイク北海道冬期仕様について

・スパイクタイヤのベースタイヤの話


原則的に125cc以下だけしか法的にスパイクタイヤを認められていない
それ以上のバイクでアタックする場合は自己責任で・・・



スパイクピンの長さってのは10mmから15mmぐらいが多い
それがきっちりと埋まる必要があるのでロードタイヤでは不可能
だからベースタイヤはブロックタイヤとなる



北海道の道の状態は以下を見て欲しい

1 アスファルトが出ている状態
タイヤのゴムの部分の摩擦とピンの先端が道と接触して走っている
走りやすさはダントツ
ただし、スパイクがよく減る
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2 アイスバーン
タイヤゴムは意味をなさず、スパイクピンの先端がささりエッジを効かせて走っている
慣れれば60キロぐらいの走行も可能
スパイクタイヤと一番相性がいい・・・が、あくまでフラットアイスバーンの話
ガッタガタのアイスバーンも多々ある
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3 雪が踏まれて圧縮された圧雪路
ブロックタイヤのブロックで雪をかいて走っている。
重量がある大型バイクなどは車重で圧雪路下のアスファルトにピンが届いているかもしれない。
非常に走りにくい。20キロから30キロぐらい出すのがせいぜいだった。
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4 新雪のフカフカの新雪路
北海道の場合、アスファルトが凍ってアイスバーンになっていてその上に新雪が積もっていると思われる
恐ろしく滑る。
無神論者でも神様にお祈りするレベル
10キロか15キロだせればいいほう
雪が降っている、または吹雪いてる環境に同時に見舞われる為、視界不良もおまけでついてくる。
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4を除く1.2.3の路面状況に対応させる為にはブロックタイヤしかない
しかも新しいものを強くオススメする
新品だと柔らかいのでパンクした時にタイヤ交換もしやすい
古いものだとコンパウンドが硬化して難易度が跳ね上がるからだ
気温-5度で軍手をはめながらチューブを傷つけずに交換するのは本当に大変だった


なるべくなら公道不可のモトクロスタイヤやエンデューロタイヤの方がブロックの隙間が広く開いているので圧雪路に強いと感じた。

個人的なオススメはIRCのVE33とVE35
今回はフロントにVE35(リヤ用しかないのでしかたなく)、リアにミシュランのT63を入れた
フロントはグリップしたが(とはいってもすごく滑る)、リアのミシュランT63は全然ダメだった。

IRC(アイアールシー) VE-33 (REAR) 100/90-19 57M WT 329424





問題は空気圧で下げれば下げるほどグリップする
ビードストッパーを入れれば0.7kgぐらいまで下げる事は可能だがホイールに穴をあけてまでやるのが嫌なので加工はやらなかった
W650の場合1.3kg以下は下げない方がいいと思う。1.1kgでパンクしたからってのが理由
これは積載重量やライダーの重量、乗り方などにもよると思う。



・スパイクピン

スパイクピンには大きく分けて3種類ある

1、ピンスパイク
もっともオーソドックスで安価なピン
とはいってもオールマイティーに路面状況に対応する
弱点は減りやすい、抜けやすい

2、カップピン ワインカップピン
バイクに一番相性がいいと思う。万能型
ダブルフランジのものが多く、抜けにくく、減りにくく、効きもよい
弱点はやや高価

3、マカロニピン
路面に接触するタングステンの面積が最も多く非常に減りにくい
重量のあるトラックなどに使われる
大型バイクにはこれを混ぜる人が多い
弱点はアスファルトや鉄板の上では非常に滑りやすいらしい
ピンスパイクやワインカップピンに少しまぜて使うと良いと思われる。


今回はピンスパイクのみを前後で約500本使用した。

入手方法は
・ヨーロッパあたりの企業から輸入する
・北海道のバイク屋、車屋、タイヤ屋に電話しまくる
・ヤフオク


本当はワインカップピンとピンスパイクのブレンドで行きたかった
北海道の業者からは安くで譲ってくれるとの事で悩んでいたのだが、ヤフオクでチップピン1000本を落札してしまった
「うーん、数多く打ち込んだら大丈夫かなぁ?」と思いチップピンだけになったが今となっては後悔している
やはりリアタイヤのセンター部分は消耗が激しいため、ピンがタイヤとツライチになって後半は本当にグリップしなかった。
(下穴の空け方に問題があったのもある)
重量のあるバイクはリアセンター部分だけでもワインカップピンとマカロニのブレンドを打ったほうがよいと思う。
他、サイド部分やフロントタイヤはチップピンで十分




・打ち込む場所について
よく、センター部分だけにスパイクを打てば十分と言われているが絶対にサイドやショルダー部分にも打ったほうがいい
特に大型バイクなどはコケた時にショルダー部分に打っていないとバイクをおこす時に路面にグリップせずに力を入れても横に滑り、起こせなくなる
あと、雪の轍から乗り上げる時にこのサイドの部分のピンが効いている
これが無いとずっと轍の谷の部分から脱出することができなくなる


・打ち込む方法
スパイクガンでやると効率的だが非常に高価




相場は中古で4万~9万
エアコンプレッサの設備も必要

私の場合は100v電源のドリル2つを使用して打ち込んだ

RYOBI 100Vドライバドリルキット FDD-1010KT


一つは下穴をあけるためのドリルが付いている
一つはチップピンをチャックで掴んで回転させながら打ち込む用

下穴を開けた熱々の状態の穴にピンを打ち込んだ方が圧倒的に入りがいい
下穴は入れるピンの全長が11mmだとしたら10mmの下穴を開ける
直径が6.5mmのピンなら6mmぐらいの下穴を開ける
ピン打ち込み用のドリルのチャックでピンの先端1mmをつかみ回転させながら押し込んでいく
(この時ピンをワザと斜めにチャックに掴ませると入りやすい)
打ち込んだあとはハンマーで数回叩きピンの座りを良くする
最終的には50kmぐらいの試走をしてナラシが必要
一本打ち込むのに大体3分~5分ぐらいかかると思う

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ピンを打ち込む時はマスクしたほうがいい
僕はこれを怠ったために夜は咳き込んで寝れなくなった

ドリル二本で500本打ち込む場合、タイヤ交換、脱着、試走、曲がったピンの修正等も入れると30~40時間ぐらいかかった
これは効率が悪い私のせいでもあるが目安はこれぐらいかな?

当初は業者にお願いするつもりでいた
東京のとあるショップで見積りをとったところ、ピン数前後共に180本ぐらい、前後タイヤ込みで8万ぐらいだった
価格は高いが非常に親切だったので注文するつもりでいた。

念のために相見積もりをとろうと北海道のバイク屋さんに電話したところ色々とアドバイスを頂き、電話で2時間ぐらいしゃべった。
こんな長電話は中学の時以来かもしれない。
バイク屋さんは「こっちでもスパイクタイヤ作るけど思い出を増やしたい、自分でやり遂げたと言う達成感が欲しいなら自分で作ったほうがよい」と言われた。

宗谷岬に着いた時、他の人達に自作のタイヤだと伝えると「すごい、すごい」と絶賛されて嬉しかったし
タイヤを大事に使おうと思えたのも自作ならではだったのかもしれない、おかげでピンも殆ど外れてなかった




○厳冬期用バイク仕様までの道


タイヤの事に触れたがもちろんそれだけでは冬期の北海道には叶わない
他に改造した点をあげておく



・フロントフォークオイルの交換

W650のフロントフォークオイルはG10なのだが、このままではリジッドサスになってしまう恐れがあったのでG5に変更した
G5でも北海道ではやや固いと感じた、G2.5そして油面を下げるぐらいしても良かったかもしれない
フロントが硬いとギャップを拾った時の転倒率が一気にあがる
なるべくならフロントサスのストロークが長いオフ車をオススメする。

僕が使ったのはこれ




・風防の取付

風が体にダイレクトにあたると-10℃の気温であっても体感は-20℃にも感じる
これは山でも言われている事なので風防をつけた
旭風防さんのW650用じゃなくても問題なくつきました。
ハンドルステーの形状がほんの少しだけ違うだけです。




・グリップヒーターとハンドルカバーの取付
これがないと本当に凍傷になるかもしれない
最低でもハンドルカバーだけでも必要
隙間はすべてガムテープで塞ぎ少しの風も侵入しないようにする
現地でテープをはろうとしても気温が低いためにつかないらしいので出発前にやっておくこと
ハンドルカバーはヤママルト社製のものが表面がつるつるしていて雪がつきにくい
グリップヒーターなんだけどW650はハンドルが一般的なものより太い?と聞いていたのでグリップ一体式ではなく巻きつけるタイプを使用しました。




・フロントフェンダーの交換
オフロードタイヤを付けることでタイヤの外周が大きくなってしまいフェンダーに干渉する
純正フェンダーを外してオフロードフェンダーをアンダーブラケット(三叉)の下に汎用ステーで取り付けた。

・大型エンジンガード
教習車についてるアレ
コケた時のダメージ軽減もあるが、バイクが完全にべったり寝ないほうが起こしやすいと考えたから
吹雪いている時にもたもた起こしている時に大型トラックが来たら一瞬で轢き殺される可能性あり、それを回避したかった
大型エンジンガード全面にプラ板を張って風よけの工夫もした
これによって下半身の体温低下も防げる


・ブレーキランプ視認性の向上
ブレーキランプがリアタイヤの巻き上げた雪で見えなくなると聞いていたのでワット数を上げた
確か純正が21/5w それを25/8wに変更した
後ろの車に早めに気づいてもらうためにこれは必要だと思う



・アイシング対策
W650にはキャブにヒーターが付いているのでこれは必要ないかと思ったが現地ではおもいっきりアイシングになってしまった
ずっとガス欠なような状態が続き、長い間走ってると不完全燃焼からくる振動の為に握力がなくなってハンドルがつかめなくなった時もあった
キャブの側面にプラ板などで直接冷たい風があたらないようにすることを強くオススメする


・プラグ交換
寒い地域用に熱価を下げた。CR8E→CR7Eへ交換





・電熱ベストやETC、各種充電器用のコンセント取付
バッテリーからダイレクトの電源
それとブレーキランプのポジションから(ACCとして)の二箇所でとった
電熱ベストはワット数の消費が多いものなどは外し忘れが恐いのでACCからとする
バッテリー式もあるけど1時間ぐらいで駄目になるらしいので12Vのシガーソケットタイプを買った。






・荷物積載の工夫
現地ではホテルなど営業しているところもあるが念のためにテントと厳冬期用シュラフは持参したほうがいいと思う
北海道の田舎は地平線しか見えないような荒野みたいなところもあり、そんなところで故障し電話も繋がらなければビバークするしかない
最悪の場合はバス停小屋も使えるが私が目にした多くのバス停は完全にドアを閉めれるタイプは少なかった。もしくは公衆便所へ避難
そのためにも荷物はなるべく積めるように工夫をした。







○人間の装備

コロンビア製ウィンタートレック(バガブーツの前のモデル?)を使用した。防水製もあり、シンサレートという保温材が使われている
[コロンビア] Columbia Men's Bugaboot Plus BM1490 219 (219 Turkish Coffee, Golden Glow/11)



靴下
メリノウール製の登山用靴下とヒートテックの二枚履き





下半身
普通の下着
極厚のタイツ
登山用の伸縮性のある普通のズボン
スノボ用ズボン
コロンビア製のカッパ






上半身
速乾性のTシャツ
ヒートテックのスウェット
電熱ベスト




フリース
ダウンジャンバー
スノボ用のジャケット、たしかAIRWALK製
コロンビア製のカッパ


モンベルの首巻き


どこのか分からないバラクラバ


OGKのジェットヘル
通気用の穴はビニールテープで塞いだ


スノボ用の手袋、インナーに軍手






この装備でも夜はメチャクチャ寒かったです。
もっと着こむと言うよりも改良が必要と感じた
とにかく風を入れないように徹底すること
体温が下がると気力や判断力がみるみる低下していきます。







○持参したもの

タンクバッグ

タンクバッグ用レインカバー

テント アライテント
山岳用テントじゃないと風でポールが折れるらしい、宗谷岬では酷い時には秒速25mの風が吹く事も



スノーフライ
普通のフライでは地上とフライの間に隙間があるので風に弱い。ただしスノーフライは雨が防げない

シュラフ ナンガ製 快適温度-14℃対応
厳冬期用じゃないと普通に死ぬ。
まちがってもホームセンターで売っている安い物ではなく3万ぐらいのモンベルやナンガやイスカ製の物を・・・
今回はシュラフの生地自体に防水加工してある物を持参したのでシュラフカバーは持たなかった





マット
サーマレスト製

スノーショベル
雪で風よけなどを防ぐのに必要

バーナー
普通の奴、イワタニ製




ガス 冬季用プロパンガス



夜、-10℃でも普通に使用できた。念のために各ガスの沸点を記載しときます↓
ブタン -0.5℃
イソブタン -11.7℃
プロパン -42.09℃




コッヘル
チタン製、バイクなら別にステンレスでよい

ヘッドランプ
テント設営時等に使用

ランタン
テント内で使用

ナイフ
念のために
今回使ったのはもやしの袋開けた時だけ

タイヤレバー二本
パンク時に使用した

空気圧計
軽量なペン型

空気入れ
自転車用、軽量小型 パナレーサー製

前後タイヤチューブ
修復用パッチだと寒くて接着しない為、チューブそのものが必要

ビードワックス
必要分だけを持参、これがないとビードが起きてこない。最悪556のような潤滑剤でもOK

予備ブレーキ、クラッチレバー二本
転倒した時用

工具一式
純正工具
他、モンキーレンチ等

充電器各種
携帯用とかカメラ用とか

携帯
ソフトバンクとイーモバ

温度計
タンクバックに入れておけば路面温度の目安にもなる。太陽が沈むとすぐに氷点下になる

コンセント タコ足
フェリーの二等寝台にはコンセントが一つしかない為

カメラ
ザクティHD2

歯磨きセット

タオル

地図
ツーリングMAPPLE 北海道版

保険証

バイクカバー
これがないと次の日の朝にバイクが雪に埋まってる事もあるとか。今回はそこまでではなかった。

これらを入れるツーリング用バッグ
当初はプラスチック製のコンテナを積んで行こうと考えていたが間に合わなくて布製のツーリングバッグを使用したが十分だった。
着替えは一切積んでいない。
5日間、一度も風呂に入っていない



持っていくものというか技術も必要だと思う
パンク修理なんかはある程度の技術も必要だし、慣れていて自信がないと実際にパンクした時、電話もつながらない状態だと冷静でいられなくなると思う
メカと電気に対するある程度の知識、少々のトラブルに動揺しない経験。

宗谷岬ツーリングにレギュレーションなんてないのだからその人に合わせた楽しみ方、危険回避の仕方があっていいと思います。
駄目だと思ったらレッカーサービス等を利用するのも手だと思います。




年越し宗谷ツーリングの目次↓
http://d.hatena.ne.jp/hukuote/about


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